プログラムと曲目の解説

PROGRAM

第1部 指揮:伊藤 透
Toru Ito, Conductor

1.  ミレニアムIII  
Millennium III

2.   われらは未来  
Sumus Futuro
We Are The Future / A Festival Intrada for Winds

3.  カント エ カンドンベ  
Canto e Camdombe

4.   時代  
JIDAI
(Year of Years!)

5.   ロシアン クリスマス ミュージック 
Russian Christmas Music for Symphonic Band

*

第2部 指揮:アルフレッド・リード
Alfred Reed, Conductor

6.  子供の組曲 
Childrenユs Suite for Solo Eb Alto Saxophone and Winds
アルトサクソフォン独奏:岩本伸一
Alto Saxophone Soloist, Shin-ichi Iwamoto

7.  第5交響曲「さくら」 
Fifth Symphony SAKURA for Winds

全曲A. リード作品
演奏:音の輪ウィンド・シンフォニカ2001

ご挨拶
音の輪コンサート代表
青山 均

 「A. リード・音の輪コンサート」も今年で13回を迎えることになりました。これも偏に皆様方のご支援の賜と厚く御礼申し上げます。

 A. リード博士は今年80歳を迎えられました。半世紀以上の時を貫き一つの世界を描き続けてきた偉大な芸術家の80歳を、このミレニアムの年に我々の音の輪コンサートによってお祝いできることを無類の幸福と感じております。このコンサートのために昨年オープンした文京シビックホールに会場を移し、メンバー一同今日の祝賀に相応しい晴れがましい気持ちで準備を進めて参りました。

 「ミレニアムに80歳を祝う」このコンサートは、前半ではミレニアムのために書かれた4つの作品、「ミレニアムIII」、「われらは未来」、「カント エ カンドンベ」、「JIDAI」と、1954年に作曲されA. リード博士のデビュー作となった「ロシアンクリスマス・ミュージック」を伊藤先生が指揮し、音の輪コンサートからのお祝いとします。
 後半は、昨年秋に初演された「子供の組曲」、サクソフォンの独奏者にこの曲の誕生のきっかけを作られた岩本伸一氏を迎えました。そして最後の曲はA. リード作品の最高傑作「第5交響曲」を博士自身に指揮していただきます。老いて益々意気盛んなご本人からのメッセージ(アピール)として、さらに我々音の輪コンサートの参加者全員からの「期待と祈り」をこの演奏で表すことができるなら幸いに存じます。

 また今年は、A. リード博士とマージョリー夫人のご結婚60周年の年でもあります。いつも仲良く腕を組み手をつなぎ合う夫婦の鏡のようなお二人の姿をいつまでも見続けることができますようにとお祈り申し上げると共に、皆様方の益々のご健勝とご発展を心よりお祈りいたします。

A. リードサイン入り記念テレカ 1,000円 

曲目の解説

レニアムIII
Millennium III

 この曲は、ソニー(株)によってソニー吹奏楽団創立40周年を記念して委嘱された。初演は1998年11月20日、東京五反田のゆうぽうと簡易保険ホールにて作曲者自身の指揮で行われた。このコンサートはソニー吹奏楽団第34回定期演奏会で、第1部の最初の2曲を同団の常任指揮者・秋山紀夫氏が指揮し、それからA. リードがシンフォニックプレリュードを指揮し、そのあと第1部の最後の曲として演奏された。以下は、この曲のために書かれたA. リードのプログラムノートである。

 オープニングの力強いファンファーレ調のモチーフ、この曲の他のテーマ的な要素はここから採られている。複数のリズムグループとパターンで表現される、それらは多分、第三世紀(ミレニアムIII)に混じり合うであろう世界の人々・文化の広い多様性、輝きへと導く、楽天的テーマであり、アンサンブルが拡大されたものとしての究極的な吹奏楽の道である。初めに木管とサクソフォンの音色、そして金管が重ねられゆっくりとあたかも楽しさとノスタルジアが混じり合った、過ぎ去ったテーマを思い起こさせるような部分で大きな演奏成果を作り上げる。続くファンファーレが、明るい動きのある第2テーマが再び戻る方向への音楽を示し、それによって輝かしい最初のファンファーレを再現させ、曲は楽天的な輝かしい終局へと向かう。(A. リード)

われらは未来
SUMUS FUTURO (We are the future)

 この曲は、キャンパス・R・イルモ中学校オーナーバンドと指揮者のデビッド・C. ウッドアードとケネス・D. ターナーによって、若い人々の芸術を発達させるための場所と授業に甚大なる情熱をそそぎ続けてきたこの素晴らしい学校の経営陣に感謝の意を込めて委嘱された。
 SUMUS FUTURO はこの学校のモットーで、意味は文字通り「我々は未来である」という、まさに今日の若者達の未来を確信する言葉はこれ以上のものは無い。

 この曲のベースには古い賛美歌の「Ellacombe」(私は神の偉大な力を誉め称える)が使われていて、吹奏楽のためのフェスティヴァル・イントラーダの形式で表現されている。初演は、ジョージア州アトランタでのサザン・ミュージック・コンファレンスにおいて、1997年12月4日にIMSコンサートバンドと作曲者の指揮により演奏された。
(A. リード)

カント エ カンドンベ
Canto e Camdombe

 カントエカンドンベはブラジルのサンパウロ・ステイト・シンフォニックバンドの委嘱により作曲され、このバンドの音楽監督で指揮者のロバート・ファリアスに献呈された。初演は1999年6月25日にサンパウロでこのバンドを指揮するロバート・ファリアスによって行われた。

 歌とダンスの組み合わせは、今日世界中の文化や社会の中で表現されている音楽の形態でもっとも古くからあり尊ぶべきものの一つの形である。この曲は、ブラジルのフォークソングをベースにした叙情的で親しみやすい"Canto"という音楽が、南ブラジルやウルグアイ生まれのダンスによって受け継がれた"Camdombe"の歌のモチーフを少し採り、それらの融合体が、一定に刻まれる定型リズム的な背景を越え、さらに渦巻く音と、リズムと、現代的ウインドオーケストラの無数の楽器の音色とによって豪華絢爛に飾り立てられたクライマックスへと突き進む。(A. リード)

時代(イヤー オブ イヤーズ!)
JIDAI (Year of Years!)

 この曲は、グリーンホール相模大野オープン10周年を記念して相模原市によって委嘱された。1999年の秋に書き上げられ、2000年2月6日にグリーンホール相模大野において作曲者自身の指揮で初演されれ、この曲を初演した相模原ユース・ウインド・シンフォニーに献呈されている。 

タイトルの 「JIDAI」 は 2000年という今まさに時代が転換しようとする Year of Years! 年々の中の年、新しい時代の始まりを宣言する曲である。楽譜はアメリカのチョス音楽出版社から今年の夏に出版される予定である。

 「JIDAI」 は4つの部分からなる序曲形式の曲で、荘厳な導入部のあとに日本的な最初のテーマが続き堂々としたクライマックスへと導かれる。そこで過ぎ去った10年間の出来事を振り返るかのような、ノスタルジックなフィーリングの静かで叙情的なモチーフが現れる。これに続いてふたたび二番目の部分のエネルギッシュなメインテーマが再現され、未来を、新しい世紀を、そして新しいミレニアムを見つめるような、輝かしい雄大なファイナルへと展開して行く。

ロシアン クリスマス ミュージック
Russian Christmas Music

 1944年11月にオリジナルが書かれ、その年の12月にコロラド州デンバーの特別コンサートで、その地域に駐屯していた5つの軍のバンドからの選抜メンバーによって初演が行われた。2年後、改訂されて編成が大きくなり、それが1947年にシンフォニックバンドの正統的な音楽のために新設されたコロンビア大学のコンテストで受賞3作品の1つになった。この改訂版による初演は1948年ジュリアード・コンサート、指揮ドナルド・I. ムーアによって行われた。この時まだ楽譜は出版されていなかったが、この曲はこの時からコンサートバンドの定番となり、吹奏楽の最も重要な作曲家の一人としての地位を確かなものにした。23歳のA. リードのデビュー作である。

 テーマはロシア系のイースタン・オーソドックス教会の礼拝用の古いコラールからとられ、4つの部分に「子供たちのキャロル」「交唱聖歌」「村の歌」「教会の歌」という副題が付けられている。コンダクターノートによれば、これらのコラールはもともと伴奏を排した声楽のみによるものであり、この吹奏楽曲の演奏に際してはいかなるテンポであれ、またクライマックスがいかにパワフルになろうとも、常に主題の響きを失わず、充分に音を保持した叙情的なスタイルを堅持しなければならない、とある。曲全体を通しスローなテンポで流れるが、微妙な揺れが随所に現われ、高度な音楽性が要求される。終曲では特に金管群にかなりのパワーを要求し、大きなクライマックスを作って終わる。

子供の組曲
Children's Suite

 この曲は、高山市と姉妹都市のアメリカ・コロラド州デンバー市との提携40周年を記念して2000年10月2日デンバー市のベッチャーホールで演奏するために高山市民吹奏楽団から委嘱された。デンバーで行われた世界初演は細洞寛氏の指揮で、また日本初演は11月23日開催の高山市民吹奏楽団第32回定期演奏会で池上政人氏の指揮で、サクソフォン独奏はいずれも岩本伸一氏により行われた。

 委嘱に際し高山市出身のサクソフォン奏者の岩本伸一氏と家族が横浜のA. リード博士宅を訪問したが、その時A. リード博士は、ようやく立ち始めた岩本氏の娘(きよこ)の遊ぶ姿を眺め共にでんでん太鼓を叩きながらその場で各楽章のタイトルを決め、思い描いた曲想を話してくれた。そしてそれがそのまま2楽章の組曲となって誕生した。
 今日演奏する楽譜は高山吹奏楽団から提供されたものであるが、今秋、アメリカのマスターズ・ミュージックから出版の予定である。

第1楽章  Kiyoko's Lullaby  きよこの子守歌
第2楽章  Kiyoko's Playtime (Den-Den Taiko)  きよこの遊び(でんでん太鼓)

第5交響曲「さくら」
Fifth Symphony (Sakura)

 この吹奏楽のための大作は、1994年の洗足学園創立70周年を記念して委嘱された。当初は同年の夏に初演を予定していたが、隔年で開催されるWASBE・第7回世界吹奏楽大会(浜松)への出演依頼があり、特に作曲家自身の指揮の下でという演奏要請を受け入れることで、1995年7月26日(アクトシティー浜松)まで延期された。
 作曲者の第3及び第4交響曲と同様この全3楽章の作品は、よくバランスの取れた楽器法や輝かしい音の響き、そして技術的な完成度の優れた現代のウィンドオーケストラによる、大規模かつ正統的な吹奏楽曲の創作に対するA. リードの確立したものの総決算と言うべきものである。

 第1楽章は自由なソナタ形式で、全楽章を通じて現れる動機の断片を含んだ叙情的な序奏で始まる。序奏の後、プレーヤーにかなり高度な技術が要求される華々しく速い部分が続く。
 第2楽章は日本の愛唱歌「さくら」のメロディーに基づいた自由な変奏曲である。
 最終楽章はふたたび自由に発展するロンド形式である。第1楽章の序奏部の主題を使って、他の様々な主題を結合しながら輝かしいフィナーレとなっている。(A. リード)

  第1楽章 Moderately and sustained; Allegro assai
  第2楽章 Freely, quasi recitative; Lento
  第3楽章 Allero molto con fuoco
第13回音の輪コンサートCD